「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」

長谷川和夫

(聖マリアンナ医科大学学長)

1>長谷川式簡易知能評価スケール

 長谷川式簡易知能評価スケール@は1974年に開発されたもので、本邦では最も広く用いられてきた。ところが設問の中で終戦日や総理大臣の名前を問うものが不適当になったことや、出生地を問う項目などは周囲の人からあらかじめ情報をとっておく必要があるなどの問題点が指摘されていた。
そこで最近、このような不適当な設問を除き新しい設問を加えて本スケールの改訂 2) が行われたので紹介する。
改訂「長谷川式簡易知能評価スケール」(HDSR)は、表1に示すように9の設問より構成される。正しい答が得られたときには1点、誤答やできなかったときには0点である。得点を加算して評価点とする。満点は30点である。
20点以下の場合は、まず痴呆の疑いをもってもよい。


表1 改訂長谷川式簡易知能評価スケール

No. 質問内容 配点 記入
お歳はいくつですか?
(2年までの誤差は正解)
01    
今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
(年、月、日、曜日が正確でそれぞれ1点ずつ)
01    
01
01
曜日 01
私達が今いるところはどこですか?
<自発的に出れば2点、5秒おいて、家ですか?病院ですか?施設ですか?の中から正しい選択をすれば1点>
012    
これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいて下さい。
以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に○印をつけておく
1:a)桜 b)猫 c)電車 2:a)梅 b)犬 c)自動車
01
01
01
   
100から7を順番に引いてください。
100-7は?それからまた7を引くと?と筆問する。
最初の答えが不正解の場合、打ち切る
(93) 01    
(86) 01
私がこれから言う数字を逆から言って下さい。(6-8-2、3-5-2-9)
<3桁逆唱に失敗したら打ち切る>
(2-8-6) 01
01
   
(9-2-5-3)
先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください
<自発的に回答があれば2点、もし回答がない場合、以下のヒントを与え正解であれば1点>
a)植物 b)動物 c)乗り物
a:012
b:012
c:012
   
これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。
(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの)
012
345
   
知っている野菜の名前を出来るだけ多く言って下さい。
<答えた野菜の名前を右に記入する。途中詰り約10秒まっても出ない場合はそこで打ち切る>
5個までは0点、6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4点、10個=5点
        012
345
   
       
       
       

上記の合計得点を出す(    )
満点:30点 cot-off point:20/20(20点以下は痴呆の疑いあり)


2>実施にあたって注意と判定方法

問題@「年齢」

満年齢が正確に言えれば1点を与える

問題A「日時の見当識」

年・月・日・曜日それぞれの正答に対して各1点を与える

問題B「場所の見当識」

被検者が自発的に答えられれば2点を与える。病院名や施設名、住所などはいわなくてもよく、現在いる場所がどういう場所なのかが答えられればよい。正答が出なかった場合「ここは病院ですか?家ですか?それとも施設ですか?」と問い、正しく選択できれば1点を与える。

問題C「3つの言葉の記銘」

使用する言葉は2系列あるため、いずれか1つの系列をせんたくして使用する。3つの言葉を言い終わってから復唱してもらい、1つの言葉に対して各1点を与える。もし正解が出ない場合、正答の数を採点した後に正しい答えを教え、覚えてもらう。

問題D「計算」

100から順に7を引かせる問題。「93から7を引くと?」というように、検査者が最初の引き算の答えを繰り返して言ってはならない。各正答に対して1点を与えるが、最初の引き算の答えが誤りであった場合にはそこで中止し、次の問題へ進む。

問題E「数字の逆唱」

数字はゆっくり間隔をおいて提示し、言い終わったところで逆から言ってもらう。正解に対して各1点を与えるが、3桁の逆唱に失敗した場合には中止し、次の問題に進む。

問題F「3つの言葉の想起」

3つの言葉の中で自発的に答えられたものに対しては各2点を与える。答えられない言葉があった場合には、少し間隔をいてからヒントを与え、正解が言えれば1点を与える。ヒントは被検者の反応を見ながら1つずつ提示する。

問題G「5つの物品記銘」

あらかじめ用意した相互に無関係な5つの物品を1つずつ名前を言いながら並べて店、物品名を想起させる。各正答に対しそれぞれ1点を与える。

問題H「野菜の名前・言語の流暢さ」

「知っている野菜の名前をできるだけたくさんいってみてください」と教示する。途中で言葉に詰り、約10秒程度待っても次の野菜の名前が出てこない場合にはそこで打ち切る。採点は5個までは0点であり、以後6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4、10個=5、となる。

HDS−Rの最高得点は30点である。HDS−R得点で20点以下を痴呆、21点以上を非痴呆とした場合に最も高い弁別性を示す。


3>信頼性・妥当性の検討

   (痴呆の重症度はReisbergら3)によるGDSスケールによる)

図1>改訂長谷川式簡易知能スケール(HDR-R)の得点と痴呆重症度
HDS−R得点と、年齢および教育歴との間には優位な相関関係はみとめられていない。
そのためHDS−Rは、加歳や学歴の影響を受け難い検査であると考えられる。
またHDS−RにおけるCronbackのα係数は0.88であり、高い信頼性が認められている。しかもHDSおよびMMSE(Mini-Mantal State Ecamination)との相関係数はそれぞれ0.92、0.94と非常に高く、並存的妥当性も高い。HDS−Rにおける痴呆の鑑別力に関しては、Cut-off pointを20/21に設定した場合に弁別力が最も高く、sensitivityが0.90、specificityが0.82となる。HDS−Rは、高い弁別力をもつスケールといえる。またReisbergによる痴呆の重症度別3)の平均と句点は図1の通りであり、各群別に有意差がみられた。