(獨協経医科大学リハビリテーション科)
日常生活の自立に必要な活動や動作は、その目標により多様に解釈「される。老年者の医療においては、能力だけでなくその実行頻度も問題とされ、行動学的知識の発展と合わせてADLの概念は、まさに活動として拡大されてきた。その結果ADLは、図1に示すように階層性に分類することが可能である。基本的ADL(BADL:basic
activities of daily
living)は、病院や施設内で早くから取り上げられてきたもので、その能力が問題にされる。これは、さらに歩行など移動能力に関係するものと、食事や更衣などの身の回りの生活動作、すなわちセルフケアに関するものに分けることが可能である。
活動の項目ごとにも難易度の順序性が想定される。BADL評価法の代表的なものとして知られるKatz
Indexは、項目を階層性に配列し、段階づけ分類するものである。これは小児の発達評価に動作や活動能力の経時的獲得順序の観察が取り入られたことを反映したもので、老化に伴う能力低下は発達の逆をたどることが仮説として論じられた。
図1に示すように、日常生活活動は、呼吸・循環といった直接的生命機能と、四肢筋力などの身体機能に裏打ちされたもので、社会的動物として拡大される側面と、その活動の巧緻性や自主選択にかかわる精神機能を反映する。成長発達に伴い拡大した活動は青壮年期を経て老年期には社会的機能の低下は、こうした拡大生活活動(AADL:advanced
activities of daily
living)の低下として早期に検出される可能性がある。高次脳機能のいくつかの側面は、その評価において、その個人の生育し生活する社会・文化的背景を考慮する必要があるが、実際の生活活動に関してはさらに社会・文化的背景に依存する側面は大であると考えられる。老年者の臨床はその専門性の発達初期から、その個人の生活の場を重視し地域社会における生活活動の維持援助を目標としてきたことから、そのために必要とされる老年期の能力として、手段的活動や動作すなわち手段的生活活動(IADL:instrumental
activities of daily
living)の評価が取り上げられてきた。このIADLは、BADLとAADLの中間に位置することから、intermediate
ADLとして論じられることもある。
ADLの評価は、老年者の総合的機能評価の一部として、また日常生活には治療計画、治療的介入の効果判定、障害予後の推定などの指標として利用去れる。精神・身体機能の回復に伴いBADL、IADLの順序で可能になるのが一般的で、評価法によっては項目を難易度の順に配列しているものもある。AADLはこれら能力を基盤とした活動の拡大をその実行頻度により評価するものである。

老年者の障害は多数であることから、ADL評価法も多様になるが、在宅患者にも適用するためにはIADLを含めるべきであり、また日常的有用性からは判定が簡便で、かつある程度の信頼性が要求される。そのようなニーズを満たすため筆者らも20項目からなる老年者のADL評価法(ADL)を開発したので紹介する。表1はそのADL項目と全般的な判定基準であり、表2はその記録表である。開発時の研究では、評価者間の完全一致率は20項目の平均が85.6%で、医師と理学療法士による評価者間成績の相関係数は0.97、各項目の内的整合性に関するCronbachαは0.97であった。Barthe Index、Katz Indexとの相関はそれぞれ0.81、0.80であり、また介護ニーズの指標や簡易知能テストの成績とも高度の相関が認められた。介護ニーズに関しては「環境調整を行って自立」と「ときに誰かの手助けを必要とする」で区切って、cut off pointを検討すると、総合点で48〜49点の間に設定した場合に最も検出精度が高かった。筆者はかつての日常診療において、すべての患者について表1の項目(3)、(6)、(7)、(8)のみをルーチンに評価していたが、目的によってはいくつかの項目を選んで使用しても有用性は十分期待される。たとえば、老年者の総合的機能評価において(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(9)、(15)、(16)の8項目が取り上げられることがあるが、自験例における介護ニーズとの相関を検討すると、この8項目と全項目の場合でそれぞれ、相関係数は-0.86、-0.88であった。
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T.基本的ADL−起居移動(BADLm)
(1)(ベット上)寝返り
(2)床からの立ち上がり・腰下ろし
(3)室内歩行(10mを目安とする)
(4)階段昇降(1階分を目安とする)
(5)戸外歩行
U.基本的ADL−身の回り動作(BADLs)
(6)食事
(7)更衣
(8)トイレ
(9)入浴
(10)整容
(11)口腔衛生
V.手段的ADL(IADL)
(12)食事の準備
(13)熱源の取り扱い
(14)財産管理
(15)電話
(16)自分の薬の管理
(17)買い物
(18)外出
W.コミュニケーションADL(CADL)
(19)意思の伝達
(20)情報の理解
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註釈:日常生活動作・活動に関する判定基準
1)実用的時間内にできるか、できないかの判定を原則とする。
2)本人、同居家族あるいは介護者より面接聴取し、内容的には日常観察に基づき判定し、直接テストを施行しなくともよい。
3)ADL能力判定基準の原則
3:完全自立、補助用具不要。
2:補助具(杖、手すり、自助具など)を利用して自立、監視不要。
1:他者の監視下、または部分的介助を必要とする。
0:他者の前面介助による。
